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かたきうちきょうだいがさ
仇討姉妹笠
国枝 史郎
Read 仇討姉妹笠 (かたきうちきょうだいがさ) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 80,178 characters · 159 screens
(汝、猿廻しめ、人もなげな! 遠く逃げ延びて隠れればこそ、このような手近い所にいて、火まで燈して平然としているとは! 見おれ、こやつ、どうしてくれるか!)
突き進んで躍りかかろうとした。しかし足が言うことをきかなかった。
と云って足が麻痺したのではなく、眼の前にある光景が、変に異様であり妖しくもあり、厳かでさえあることによって、彼の心が妙に臆れ、進むことが出来なくなったのである。
(しばらく様子を見てやろう)
木の根元にうずくまり、息を詰めて窺った。
老人は何やら云っているようであった。
白い顎鬚が上下に動き、そのつど肩まで垂れている髪が、これは左右に揺れるのが見えた。
どうやら老人は猿廻しに向かって、熱心に話しているらしかった。
しかし距離が遠かったので、声は聞こえてこなかった。
主税はそれがもどかしかったので、地を這いながら先へ進み、腐ちた大木の倒れている陰へ、体を伏せて聞耳を立てた。
「……大丈夫じゃ、心配おしでない、猿めの打撲傷など直ぐにも癒る」
こういう老人の声が聞こえ、
「躄者さえ立つことが出来るのじゃからのう。――もう打撲傷は癒っているかもしれない。