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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Read 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 203,094 characters · 411 screens
祝言は追ってのこととは思えども、今この場合、姉御の詞にさかろうもいかが。兎も角もここで杯しようぞ。
玉琴 どうぞそうして下さりませ。
与五郎 そなたの頼みじゃ、なんなりともきこうよ。
玉琴 あい。世にたよりない我々姉妹、この末ともにかならず見捨てて下さりまするな。
与五郎 坂東武者は弓矢ばかりか、なさけにかけても意地は強い。一度誓いしことばの末は、尽未来まで変るまいぞ。
玉琴 おお。
(与五郎の手をとって押しいただく、奥より玉虫は三方と土器を持ちていず。)
玉虫 世にありし昔ならば、かずかずの儀式もあるべきに、花やもみじの色もなき浦の苫屋のわび住居。心ばかりの三三九度じゃ。
(三方を両人のあいだに据うれば、両人は形をあらためて一礼す。玉虫は更に祭壇より神酒を入れたる甕を取りおろし、うやうやしく押しいただきて、しばしは口のうちにて何事をか念ず。)
玉虫 女子ばかり住む家に、酒のたくわえは無けれども、幸いにここに神酒がある。めでたい折柄にはふさわしかろう。さかずきは女子から……。
玉琴 あい。
(玉琴はまず土器を取り、玉虫は酌に立つ。つづいて与五郎も飲む。かたのごとくに杯のやりとりあり。