Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Read 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 203,094 characters · 411 screens
主親の仇か、大切の宝か。」と、小坂部は彼に同情するようにまた訊いた。
八幡船の倭寇に主人か親かを殺されて、その復讐のために遠く渡って来たのか。あるいは大切の宝物を奪い取られて、それを取り返すために尋ね迷っているのか。恐らくそういう目的をいだいて、何物をか探し歩いているのであろうと小坂部は想像した。しかし彼は髪の長い頭を忙がわしく振った。
「違います、違います。わたくしはそんなものを尋ねているのではござりませぬ。わたくしはお身さまを尋ねていたのでござりまする。」
彼を気違いと見て、侍女どもは声をあげて笑い出した。その端下ないのを小坂部は眼で叱って、さらに眇目の男を屹と眺めた。
「さりとは解せぬことじゃ。異国に生まれたお身が何のためにわたしをたずねてまいられた。」
「神のお告げでござる。」
こう言って彼は爪の伸びた指先きでおどろの髪をかきあげながら、畏れ敬うように再び小坂部の顔を打ち仰いだ。その敬虔の態度がいよいよ小坂部の注意を惹いて、かれも自分の足もとにひざまずいている異国の眇目の男をおのずと尊みたいような、一種の厳粛な心持になった。取り分けてかれは、相手の燃えるような片眼の光りに自分の魂を怪しく惹き付けられた。