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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Read 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 203,094 characters · 411 screens
阿香 あら、内へ這入らないの。
高田 まあ、止そう。毎晩のように尋ねて行くと、お父さんや阿母さんにうるさがられる。第一、僕も極まりが悪いからな。
阿香 かまわないわ。始終遊びに来るんじゃありませんか。お寄りなさいよ。
高田 始終遊びに来る家でも、この頃はなんだか極まりが悪くなった。まあ、帰るとしよう。
阿香 いいじゃありませんか。(袖をひく。)今夜は十五夜だから、一緒にお月様を拝みましょうよ。
高田 (躊躇して。)それにしても、まあ、ゆう飯を食ってから出直して来ることにしよう。
阿香 じゃあ、屹とね。
高田 むむ。(空をみる。)今夜は好い月が出そうだ。
阿香 お月様にお供え物をして待っていますよ。
(高田はうなずいて、下のかたへ引返して去る。阿香はそれを見送りながら、正面へまわりて扉を叩く。)
柳 (みかえる。)誰だえ。お父さんかえ。
阿香 わたしですよ。
柳 戸は開いているよ。お這入り……。
阿香 (扉をあけて入る。)あら、暗いことね。まだ燈火をつけないの。
柳 いつの間にか暗くなったね。
阿香 町の方じゃあ、もう疾うに電燈がついているわ。
柳 町とここらとは違わあね。あかりをつけないでも、今にもうお月様がおあがりなさるよ。