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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Read 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 203,094 characters · 411 screens
柳 そう思うと、わたしも何だか寂しいような気もするが、いつまで待ってもいられまい。
阿香 今に高田さんが来ますよ。
柳 お前、約束をしたのかえ。
阿香 きっと来ると云っていましたわ。
李中行 高田さんが来たところで、あの人は他人だ。せがれの代りになるものか。こうと知ったら、町へ出た時にあいつの店へ寄って、もう一度よく念を押してくれば好かったな。
阿香 (それには構わず。)高田さんは何をしているんだろう。
(阿香は表へ出で、柳の下に立って下のかたをみる。表はいよいよ明るくなる。)
柳 (窓から声をかける。)もうお月様はおあがりになるかえ。
阿香 (空をみる。)ええ、もういつの間にかお上りになりましたよ。
柳 じゃあ、もう拝みに出なけりゃあならない。さあ、お父さん。
李中行 中二はまだ帰らないのかなあ。
阿香 高田さんはどうしたんだろうねえ。
(李は妻に促されて、渋々ながら立ち上り、打ち連れて表へ出る。月の光いよいよ明るく、虫の声。)
柳 おお、好いお月さまが出た。十五夜にこんなに晴れたのは、近年にめずらしい。さあ、拝みましょうよ。
(李と、柳、阿香の三人は形をあらため、下のかたの空を仰いで拝す。