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いはいだ
位牌田
田中 貢太郎
Read 位牌田 (いはいだ) by 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 1,041 characters · 2 screens
老人はそれを見て、村の人たちを笑っていた。
秋の収穫が目前に迫った某日のこと、位牌田の隣の田を作っていた農夫が、午になって弁当を喫うつもりで、そこの畦径へ腰をおろして、何の気なしに位牌田の方へ眼をやったところで、そこに何か変った物を見つけたのか顔色を変えた。位牌田の上で、提灯ぐらいの大きさの青い火玉がくるくる廻りながら上へあがったりさがったりしていた。農夫は弁当箱を投げ出したまま後をも見ずに逃げて往った。
白昼位牌田の上で青い火玉が舞っていたことは、その日のうちに隣村にも知れて、老人の耳へも入ったが、老人は臆病者の眼にだけ見える火玉だろうと云って気にしなかった。
その夜老人は平生のように十時比から寝に就いたが、夜半になって急に発熱して苦しみはじめた。家族は驚いて薬を服せたり医者を呼んだりしたが、老人の熱は去らなかった。老人は苦しそうに身をもがいて、何か囈言のようなことを云いつづけていたが、朝になってぽっくりと死んでしまった。
村の人たちは今更のように位牌田の恐ろしい事を語りあった。それからはもう位牌田に手をつけようとする者は全然無くなった。その位牌田は寺院の跡で、その寺の住職が強盗のために殺されたので、住職の恨みが残っていると云う者もあるが、要するに現代の科学的な常識では判らない事である。