Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あにのこえ
兄の声
小川 未明
Read 兄の声 (あにのこえ) by 小川 未明 (おがわみめい) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.
N3 · intermediate · modern kanji and kana · 4,426 characters · 9 screens
家のものは、その後も、兄がいるときと同じように、そうじはするけれど、だれも、手をつけようとしなかったので、本箱のなかも、たなのかざりも、兄が出ていったときのままとなっていて、すこしも変わっていなかったのです。
兄は、さもなつかしそうに、あたりを、見まわしていました。それから、いつもそうしたように、好きなレコードをかけました。
外国物では、アベ=マリアとか、粗朴ながら、血のつながりに、哀愁をもよおす日本の俚謡などを兄は、このみました。
「義ちゃんが、ずっとこうして、家にいてくれたらいいのにね。」と、姉はそばに立ち、鼻をつまらせていました。
「じきにかえってきますよ。そうしたら、もうどこへもいきません。」と、兄は、答えました。
「お母さんが、心配していらっしゃるから、きっと無事に帰ってね。」
晩方近く、小雨の降るなかを、兄は、隊へとかえりました。みんなが、門口まで見送りに出ると、ふりかえって挙手の礼を残して去りました。
「あんまり思いがけなかったので幽霊かと思ったわ。」と、姉はへやへもどると、母に話していました。
「公用のついでとかいいますが、よく寄ってくれましたね。