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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Read 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 160,664 characters · 323 screens
「ナーンだ篦棒、体のことか」源介は変に苦笑したが、
「体が資本の駕籠屋商売、そりゃあ少しはよくなくてはね」
「ずいぶんお目方もございましょうね?」
「へえ」と云ったが源介は、裏切られたような気持ちがした。
「ほんとに何んだいこの女は! あぶなく酷い目に逢いかかったのに、もう洒々してこの通りだ。人の目方まで量りゃあがる。――十七貫はございましょうよ」
「ずいぶん骨太でいらっしゃいますことね」
「あれ、あんな事云やあがる。厭になっちまうなこの女は。――ヘイヘイ骨太でございますとも」
「ホ、ホ、ホ、ホ、結構ですわ」
「ワーッ、今度は笑いやがった。変に気に入らねえ女だなあ」源介はすっかりウンザリした。
すると、女がまた云った。
「妾、さっき、あなたの胸へ、一生懸命縋り付きましたわね。その時よっく計りましたのよ。ええあなたのお体をね」
源介はピタリと足を止めた。そうして女をじっと見た。ズーンと何物かで脳天を、ぶち抜かれたような気持ちがした。
と、女は手を上げて、そこに立っていた巨大な屋敷の、黒板塀をトントンと打った。それが何かの合図と見えて、そこの切り戸がスーと開いた。
「主人の屋敷でございますの、お礼を致したいと存じます。