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はちがつみっかのゆめ
八月三日の夢
中谷 宇吉郎
Read 八月三日の夢 (はちがつみっかのゆめ) by 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 5,827 characters · 12 screens
随分広い講堂である。奥は薄暗くて、円天井に太い梁が入っている。その梁が白く目立っている。なるほどあれが南北に通っているのだなと思う。椅子がいっぱい並んでいて、学生がぎっしりつまっている。真中に広い通路が一本だけまっすぐに通っている。白い太いゴシック風な柱が沢山並んでいて、通路がその中を抜けてずっと奥まで続いている。女学生が何人か一列に並んで、その通路を静かにゆっくりゆっくり進んで行く。先頭の女学生が、試験管にその薬を入れたものを捧げ持っている。
白髪の教授が太い柱の向うにいて、説明をしているが、よく聞きとれない。女学生は皆真白いドレスを着ている。その白衣のスカートを床の上に長くひきながら、試験管をもって一列に並んで、しずしずと歩いて行く。ひどくゆっくりした音楽のステップである。
梁の下に近づくと、試験管の中が紫色に光り出す。梁の中には鉄骨がはいっている。そこで磁場が強くなっているはずである。なるほどそうか、巧い指示実験だ。しかしどうも話が巧すぎる。夢かもしれない。夢は色が無いはずだが、確かにあの光は紫色に光っているから、夢ではないのだろう。試験管を大写しにしてよく見ると、ゼラチンのようなものがはいっていて、その中に網目のように光るところがある。