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はっけんでんだんよ
八犬伝談余
内田 魯庵
Read 八犬伝談余 (はっけんでんだんよ) by 内田 魯庵 (うちだろあん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 21,945 characters · 43 screens
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金碗大輔が八房もろとも伏姫をも二つ玉で撃留めたのはこの長物語の序開きをするセラエヴォの一発となってるが、日本に鉄砲が伝来したのが天文十二年であるは小学校の教科書にも載ってる。もっとも天文十二年説は疑問で、数年前にも数回歴史家の間に論争されたが、たといそれ以前に渡ったものがあったにしてもそれよりおよそ八十年前の(伏姫が死んだ年の)長禄の二年に房州の田舎武士の金碗大輔がドコから鉄砲を手に入れたろう。これを始めに『八犬伝』には余り頻繁に鉄砲が出過ぎる。白井の城下で道節が上杉勢に囲まれた時も鉄砲足軽が筒を揃えて道節に迫った、曳手・単節が荒芽山を落ちる時も野武士に鉄砲で追われた、網苧の鵙平茶屋にも鉄砲が掛けてあった、甲斐の石和の山の中で荘官木工作が泡雪奈四郎に鉄砲で射殺された。大詰の大戦争の駢馬三連車も人を驚かせるが、この踊り屋台然たる戦車の上に六人の銃手が銃口を揃えてるのは凄まじい。天下の管領の軍隊だから葡萄牙人よりも先に何百挺何千挺の鉄砲を輸入しても妨げないが、野武士や追剥までが鉄砲をポンポン撃つのは余り無鉄砲過ぎる。網苧の山里の立場茶屋に猪嚇しの鉄砲が用意してあるほどなら、道節も宝刀を捻くり廻して居合抜の口上のような駄弁を弄して定正に近づこうとするよりもズドンと一発ブッ放した方が余程早手廻しだったろう。