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とううん
凍雲
矢田 津世子
Read 凍雲 (とううん) by 矢田 津世子 (やだつせこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 14,121 characters · 29 screens
「そうでねえ。登記所の鈴木さんな、ゆうべ髪刈りにきて言ってたが、裏山の方半分だとよ。それも買ったでなく、貸金の抵当だとよ」
「金持ちにあ金こ貯まるばかしでな。貯まれば貯まる程きたなくなるってな。あぶらやのお父さんもお父さんだが、お母さんの締まることったら、鶏さやる餌をな、市日の終ったあとさ籠こ持たせて拾わせにやるってさあ」
「それで税金の方は誤魔化そうとしているし、町会さ当選した時だって、酒こ二升しか買わねえってな。あそこのお母さん、漬物もってきたきりで『これで飲んでたんえ』って言ったとさ。『もう、こりごりだ』って、便利屋の爺ちゃ言ってたぜ」
「便利屋か。何んと、あれだば一斗あずけたって『もう、こりごりだ』べしちえ」
みんな一様に笑った。
「何んと、賑かだこと」
戸籍係りの飯塚時二郎が硝子戸を鳴らして入ってきた。鏡に顔を寄せて、顰めたり口を引き伸ばしたりして見ていたが、
「年とったせいか、皺がふえたなあ」
と独り言を言った。
「髭こあたるしか」
親方が立ち上った。
「この顔なら、あたってもあたらなくても同じだからなあ。まあ、一服さしてくれや」
「お前みてえな色男が今からそんなこと言ってるこったら、親方あ店じまいだよ。