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とううん
凍雲
矢田 津世子
Read 凍雲 (とううん) by 矢田 津世子 (やだつせこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 14,121 characters · 29 screens
「俺も仲人になった手前、この話は何んとか纏りを付けねば、第一世間に顔向けが出来ねえしなあ。お前もここ暫らく辛抱して、楯つかねえ様にしな。おっつけ恰好がついたら、役場さでも出るようにして、家を別に二人っ切りで持つだなあ」
仙太をやりすごしておいて、先生は、空を仰ぎながら立小便をした。
「何んと、雲の早えこと!」
仙太は少しさきで待った。爪さきで石ころをはじきとばしながら、何故ともなく、結婚当時の生きいきとしたお高の姿を思い浮べていた。頤を突き出すようにした甘え顔の愛おしさ、羞を含んで俯向いた時の衿足の水々しさ、小指を上げて額の黒い細い縮れっ毛を掻きあげる仕癖までも、まざまざと浮んでくる。
往還へ出て、二人は肩を並べて歩いた。埃が二人を包んで、さっと乾いた田圃へ流れ去った。田圃からは、鴉が何羽も、あとからあとからと舞い上った。
「先生、なんとはあ、ひでえ風でして」
頬かむりの男がすれちがった。ちらりと仙太を見て偸み笑いをした。
仙太は俯向いて歩いていた。
「ひとつ助けると思って、骨折って下さい。決して、御恩は忘れませんでして」
仙太は何遍も繰りかえした。
町通りの、古川町への曲り角で、仙太はもう一度同じことを頼んだ。