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けんきょう
剣侠
国枝 史郎
Read 剣侠 (けんきょう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,961 characters · 310 screens
「お兄様あれは?」と澄江は云って不安そうに指を差した。
博徒風の人間が切り合ってい、数人の者がそれを見ている、そういう光景が行手に在り、鏘然その時一太刀合い、日光に白刃が火のように輝き、直ぐに引かれて又相正眼、二人が数間飛びすさり、動かずなった姿が見られた。
「切り合いだな」と主水は云った。
「博徒同志の切り合いらしい」
「かかりあいなどになりましては、大事持つ身迷惑千万、避けて行くことにいたしましょう」
「それがよかろう」と主水は云った。
「ではその辺りから横へ逸れて……お待ち」と不意に足を止め、主水はじっと一所を見詰めた。
「立木に背をもたせかけ、切り合いを見ている武士がいる。昨日見かけた編笠の武士だ!」
「まあ」と澄江は声をはずませ、主水へ躰を寄り添わせたが、
「あのお侍さんでございますか。……おお、まさしく水品陣十郎!」
「編笠を脱いだあの横顔、いかさま陣十郎に相違ない! ……妹!」
「お兄様! 天の賜物!」
「とうとう逢えた! さあ用意!」
「あい」と云うと懐中していた、長目の懐刀の紐を解いた。
尋ねる親の敵の姿を目前にまざまざ見かけたのであった。思慮深い主水もいくらか上気し、敵陣十郎の周囲にいる博徒が、陣十郎に、味方をして、刃向って来ないものでもない、そういうことさえ思慮に入れず、討って取ろうの一心から、妹澄江と肩