Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
じゅうにしこう
十二支考(上)〔全2冊〕
南方 熊楠
Read 十二支考(上)〔全2冊〕 (じゅうにしこう) by 南方 熊楠 (みなかたくまぐす) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 290,735 characters · 566 screens
それにどうしても人に従わぬ馬あるは、その眼の水晶体平らにて物大きく見えぬものか。しからば眼鏡を掛けさすがよい。ただし馬の眼果して物を大に視るとするも、何もかも皆廓大さるるから諸物大小の割合は少しも常態を外れず、人は馬の眼に依然他の馬より小さく見えるはずと論じた人あり(一九一六年六月二十四日の『随筆問答雑誌』五〇九頁)。この事は『安政三組盃』てふ講談筆記にもあれど、日本で伝うるところはやや西説と異なり、奔馬の前へ人が立ち向えば、その人のみ馬眼に非常に大きく見えるというので、水晶体の何のと物理学上の論でなく、心理学上の事と思う。前項に述べた通り、馬ほど喪心しやすき畜生なきと同時に、この損点がまた得点となりて、たちまち眼前へ立ちはだかった人を極めて怖るる余り、畏れ入りて静まり落ち着くのかと想う。
田辺町に名高い○永とて不具の痴漢五十余歳で数年前死んだ。この者いかに狂う馬の前でも何の恐るるところなく進み出て、これを静むる事百に一を失わなんだが、死する前に一回遣り損ない指を噛まれた。この痴人年老いて馬を制する力衰えたのか、馬の素質に種々あるのかちょっと分らぬが、面白い研究問題じゃ。