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じゅうにしこう

十二支考(下)〔全2冊〕

南方 熊楠

Read 十二支考(下)〔全2冊〕 (じゅうにしこう) by 南方 熊楠 (みなかたくまぐす) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 251,906 characters · 495 screens

Aozora Bunko

猿は人に近付かぬ故その天然の性行を睹た学者は少ない。したがって全然信認は如何だが、昔から永々その産地に住んだ支那人の説は研究の好き資料だ。例せば『本草啓蒙』に引いた『典籍便覧』にいわく、〈猿性静にして仁、貪食せず、かつ多寿、臂長く好くその気を引くを以てなり、その居相愛し、食相禁ず〉と節米の心掛けを自得せる故、馬鈴薯料理の試食会勧誘も無用で、〈行くに列あり、飲むに序あり、難あればすなわちその柔弱者を内にして、蔬を践まず、山に小草木あれば、必ず環りて行き、以てその植を遂ぐ、猴はことごとくこれに反す〉。これなら桃中軒の教化も危険思想の心配も要らぬ。誠に以てお猴目出たやな。

支那の本草書中最も難解たる平猴また風母、風生獣、風狸というがある。唐の陳蔵器説に風狸州以南に生じ、兎に似て短く、高樹上に棲息し、風を候うて吹かれて他樹に至りその果を食う。その尿乳のごとく甚だ得がたし、諸風を治すと。明の李時珍諸書を考纂していわく、その獣嶺南および蜀西山林中に生ず、状は猿猴のごとくで小さし、目赤く尾短くてなきごとく青黄にして黒し、昼は動かず、夜は風に因って甚捷く騰躍し巌を越え樹を過ぎて鳥の飛ぶごとし、人を見れば羞じて叩頭憐みを乞う態のごとし、これを打てばたちまち死す、口を以て風に向えば復活す、その脳を破りその骨を砕けばすなわち