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じゅうにしこう
十二支考(下)〔全2冊〕
南方 熊楠
Read 十二支考(下)〔全2冊〕 (じゅうにしこう) by 南方 熊楠 (みなかたくまぐす) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 251,906 characters · 495 screens
し物にて黒く濃くして味渋みに甘きを兼ねていかさま仙薬ともいうべき物なりと、熊野にも稀にありと聞けど海外に似た例をまだ承らぬが、予の「酒泉の話」(大正六年『日本及日本人』春季拡大号)に述べた通り、樹竹の幹などに人手を借りず酒様の物が出来る例少なからず予の手許に標本が集り居る。由って推し考うるに、獣類が蓄えた果物もしくは食べ残しが瀦って旨く醗酵するはあり得る事だ。
猴類は人に多く似るものほど鬱性に富み、智力増すほど快活を減ずとフンボルトは説いた。賢人憂苦多く阿房は常に飛び廻るようなものか。ただしかかる断定は野生の猴を多く見て始めて下すべく、人手に入れたもののみを観察して為し得べきでない。『奥羽観跡聞老志』九に五葉山の山王神は猴を使物として毎年六月十五日猴集まって登山すとあり。紀州の白崎では、以前榕実熟する時、猴これを採りに群集し、田辺附近の竜神山にも、千疋猴とて、夥しき猴の団体を見た事あるも、近年一向なし。猴ごとき本来群居するものの性質行為を研究するは、是非ともその野生群居の処にせにゃならぬに、そんな所は本邦で乏しくなった。支那にも千疋猴あった例、程伯淳、山に遊んで猴一疋も見えず、山僧より〈晏元献南に来て※(「けものへん+彌」