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じゅうにしこう
十二支考(下)〔全2冊〕
南方 熊楠
Read 十二支考(下)〔全2冊〕 (じゅうにしこう) by 南方 熊楠 (みなかたくまぐす) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 251,906 characters · 495 screens
に信濃の前司さるがきと出たれば本よりかの国の名産と見える。これも猴が好き食うから名づけたるにや。
猴に関する民俗を述ぶるに、まず猴崇拝の事から始めると都合が宜しい。『大英百科全書』十一板二巻動物崇拝の条に、インドで猴神ハヌマンもっとも著わる。ヒンズー教を信ずる諸村で猴を害する事なし。アフリカのトブ民も猴を崇拝す。仏領西アフリカのボルト・ノヴチでは小猴を双生児の守護尊とすとある。マレー半島のセマン人信ずるは、創世神タボンの大敵カクー、黒身炭のごとく西天に住む。ここを以て東は明るく西は闇し、天に三段ありてカクーの天最高所にあり、ブロク猴の大きさ山ほどなるがこれを守り、その天に登って天菓を窃まんとする者を見れば、刺だらけの大なる菓を抛って追い落す。世界終る時、地上一切の物ことごとくこの猴の所有となる(スキートおよびブラグデン著『巫来半島異教民族篇』巻二、頁二一〇)というが、いかな物持ちとなっても世界が滅びちゃ詰まらないじゃないか、このブロク(椰子猴、学名マカリス・ネメストリヌス)についてマレー人の諺に「猴に裁判を乞う」というがある。一人ありて他の一人の所有地に甘蕉を植え、その果熟するに及び互いにこれを争う。