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じゅうにしこう
十二支考(下)〔全2冊〕
南方 熊楠
Read 十二支考(下)〔全2冊〕 (じゅうにしこう) by 南方 熊楠 (みなかたくまぐす) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 251,906 characters · 495 screens
この時スグリヴァ猴王の軍を督せしハヌマン、身体極めて軽捷で、たちまち海上を歩んでかの島に到り、千万苦労してようやく私陀が樹蔭に身の成り行きを歎くを見、また、その貞操を変ぜず、夫を慕い鬼王を詈るを聴き、急ぎ返って羅摩に報じ、その請に応じて、山嶽、大巌を抜き、自分の身上にあるだけの無数の石を担げて幾回となく海浜に積み、ついに大陸と島地の間に架け渡した。羅摩すなわち猴軍を先に立て、熊軍をこれに次がせて、新たに成った地峡を通り、楞伽城を攻め、勝敗多回なりしもついに敵を破って鬼王を誅し、私陀を取り戻し、故郷へ帰った。
竜樹菩薩の『大智度論』二三に問うて曰く、人あり無常の事至るをみ、転た更に堅く著す、国王夫人たる宝女地中より生じ、十頭の羅刹のために大海を将ち渡され、王大いに憂愁するを智臣諫めて、王智力具足すれば夫人の還るは久しからざる内にあり、何を以て憂いを懐かんと言いしに、王答えて我が憂うる所以は我が婦を取り還しがたきを慮らず、ただ壮時の過ぎやすきを恐ると言いしがごとしとあり。これは『羅摩延』(ラーマーヤナ)の長賦に、私陀実は人の腹から生まれず、父王子なきを憂い神に祈りて地中より掘り出すところ、その美色持操人界絶えて見ざるところとある故宝女といい、古インド人はセイロンの生蕃を人類と見ず、鬼類として羅刹と名づけた。