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オチフルイかいじゅうろうてがらばなし
十二神貝十郎手柄話
国枝 史郎
Read 十二神貝十郎手柄話 (オチフルイかいじゅうろうてがらばなし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 127,035 characters · 254 screens
たげの、品のある老人へ囁いた。「ところがそれっきり旅の者は、この家から姿を隠したそうで。つまりこの家から出ても行かず、またこの家におりもせず、消えてなくなったのだということで」
「さよう私もそんな話を、たしか若い頃に聞きましたっけ。その時以来この征矢野家は、隆盛に向かったということですな」寺子屋の師匠は相槌を打った。「ところがその後ずっと後になって、ごろつきのような人間が、この征矢野家へやって来て、先代を強請ったということですな」
「さようさようそうだそうです。親父を生かして返してくれ、それが出来なかったら財産を渡せ――こう云って強請ったということで」
「ところがその男もいつの間にか、姿が失くなってしまったそうで」
「そこで私はこう思いますので」村医者らしい老人は云った。
「ここの屋敷を掘り返したら、浮ばれない無縁の二つの仏が、白骨となって現われようとね」
「まさにね」と寺子屋の師匠が云った。「と思うとここにあるご馳走なども、血生臭くて食えませんよ」
「先代が裏庭の松の木の枝で、首を縊って死んでいたのを、私は検屍をしたのでしたが、厭な気持ちがいたしましたよ」
「私は現在ここの娘の、お三保さんに読書を教えているのですが、どうも性質が陰気でしてな」