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なんちしんじゅう
南地心中
泉 鏡花
Read 南地心中 (なんちしんじゅう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 39,205 characters · 79 screens
そやったら多一さん、貴方先へお受けやす。」
「はい、」と斉しく逡巡する。
「どうしやはったえ。」
「御寮人様、一生に一度の事でござります。とてもの事に、ものが逆になりませんよう、やっぱり美津から……」
とちょっと目を合せた。
「女から、お盞を頂かして下さりまし。」
「そやかて、含羞でいて取んなはらん。……何や、貴方がた、おかしなえ。」
ふと気色ばんだお珊の状に、座が寂として白けた時、表座敷に、テンテン、と二ツ三ツ、音じめの音が響いたのである。
二人は黙って差俯向く。……
お珊は、するりと膝を寄せた。屹として、
「早うおしや! 邪魔が入るとならんよって、私も直きに女紅場へ行かんとならんえ。……な、あの、酌人が不足なかい。」
二人は、せわしげに瞳を合して、しきりに目でものを云っていた。
「もし、」
と多一が急いた声で、
「御寮人様、この上になお罰が当ります。不足やなんの、さような事がありまして可いものでござりますか。御免下さりまし、申しましょう。貴女様、その召しました、両方のお袂の中が動きます。……美津は、あの、それが可恐いのでござります。」と判然云った。
と、頤を檜扇に、白小袖の底を透して、