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なんばんひわもりうこんまる

南蛮秘話森右近丸

国枝 史郎

Read 南蛮秘話森右近丸 (なんばんひわもりうこんまる) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 55,869 characters · 112 screens

Aozora Bunko

ここは京都二条通、辻に佇んだ一人の女、凜々として説いている。年の頃は二十歳ぐらい、その姿は巫女、胸に円鏡をかけている。頭髪を束ねて背中に垂らし、手に白綿を持っている。その容貌の美しさ、洵に類稀である。眉長く顳まで続き、澄み切った眼は凄いまでに輝き、しかも犯しがたい威厳がある。その眼は時々微笑する。嬰児のような愛らしさがある。高すぎる程高い鼻。男のそれのように、肉太である。口やや大きく唇薄く、そこから綻びる歯の白さ、象牙のような光がある。秀た額、角度立った頤、頬骨低く耳厚く、頸足長く肩丸く、身長の高さ五尺七八寸、囲繞いた群集に抽出ている。垢付かぬ肌の清らかさは、手にも足にも充分現われ、神々しくさえ思われる。男性の体格に女性の美、それを加えた風采である。

だが何という大胆なんだろう! 夕暮時とは云うものの、織田信長の管理している、京都の町の辻に立ち、その信長を攻撃し、その治世を詈るとは!

驚いているのは群集である。

市女笠の女、指抜の若者、武士、町人、公卿の子息、二十人近くも囲繞いていたが、いずれも茫然と口をあけ、息を詰めて聞き澄ましている。反対をする者もない、同意を表する者もない。