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なんばんひわもりうこんまる

南蛮秘話森右近丸

国枝 史郎

Read 南蛮秘話森右近丸 (なんばんひわもりうこんまる) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 55,869 characters · 112 screens

Aozora Bunko

両眼瞑ると感覚だ。柄を双手に握りしめ「ウン」とばかりに突き出した。

だが何の手答えもない。ギョッとして眼を開いた眼の前に、十数本の松火が、一列にタラタラと並んでいた。

異様の扮装をした十数人の男が、美々しい一挺の輿を守り、若武士の眼前にいるではないか。

いつの間にどこから来たのだろう? 森の奥から来たらしい。町人でもなければ農夫でもない。庭師のような風俗である。そのくせ刀を差している。その立派な体格風貌、その点から云えば武士である。

若武士などへは眼もくれず、巫女の前へ一斉に跪坐いたが、「いざ姫君、お召し下さりませ」

「ご苦労」と家来に対するように、巫女は鷹揚に頷いたが、ユラリとばかりに輿に乗った。

「さようならよ、逢いましょうねえ、いずれは後日、ここの森で……綺麗で若くて勇しい、妾の好きなお侍さん」

それから巫女は意味ありげに笑った。

「さあお遣りよ、急いで輿を!」

松火で森を振り照らし、スタスタと奥へ行ってしまった。

3

信長の居城安土の城、そこから乗り出した小舟がある。

春三月、桜花の候、琵琶の湖水静かである。

乗っているのは信長の寵臣、森右近丸と云って二十一歳、秀でた眉、鋭い眼、それでいて非常に愛嬌がある。