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ゆうじんいっかのし
友人一家の死
松崎 天民
Read 友人一家の死 (ゆうじんいっかのし) by 松崎 天民 (まつざきてんみん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 6,805 characters · 14 screens
現にM子は国へ帰る時、頸部に湿布をしていたし、S子は頬を紅潮して、気のせいか熱もあるように見えていた。
「姉と妹二人きりになったのです。故郷の人達の同情に依って、何とか生活して行く道はあるでしょうが、身体だけは何うか大切にして下さい。この上、あなたかお妹さんでも病気になると、それこそ取返しが付きませんからね…………」
僕はこんな手紙を姉娘に送って、気勢を添えもし慰めもした。しかし東京の女学校を卒業した気丈な娘と、郷人の気心とが、果して巧く合致するか何うか。故郷の落合町よりも、未だ三四里山奥の遠縁の者と、話が持上っていた縁談は、その後、何うなったであろう。姉娘は東京へ出て、一人で働いて暮したいような希望があるらしかったが、その後、何うした事であろう。僕は気にかかりながらも、その日その日の生計に追われて、久しい間、故郷とは消息を絶っていた。
そこへ姉娘から突然「数日前上京いたしました、何のお変りも御座いませんか、一度お尋ねせねば済まないのですが…………」という端書が来たのは、今年の春浅い頃であった。端書の表面には「趨町下六番町泉様方にて」とあって、何うして上京したのか、妹二人は何うしたのか、これから何うする積か、そんな事は何も書いてなかった。