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うもんとりものちょう
右門捕物帖(一)
佐々木 味津三
Read 右門捕物帖(一) (うもんとりものちょう) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 220,431 characters · 428 screens
いいました。
「ちえッ。だから、いわねえこっちゃなかったんだ。きつねにでも化かされたのかと思いましたが、どうやら酒で殺されて、まんまとあいつらに、あっしたちがはめ込まれているんじゃごわせんか。ね! しっかりおしなせいよッ」
しかし、右門は黙ってただくすくすと笑っているのです。あれほどあびるように飲んだのに、格別ふつか酔いにやられたような顔もせず、いつもよりかそのりりしい面がやや青白いというだけのことで、くすくすとただ笑ってばかりいたものでしたから、伝六がむきになってきめつけました。
「なにがおかしいんですか! ごらんなさい! だんならしくもなく、あんなくらげのふやけたような女に目じりをおさげなすったから、刀はとられる、十手はとられる、あげくのはてにこんな物置き小屋へたたき込まれちまって、うすみっともないざまになったんじゃごわせんか! いったい、どうしてここから逃げ出すおつもりですかい!」
だのに、右門は依然くすくすと笑ったままでした。笑いながら、そしてその青白い顔を転じると、格子窓からぬか雨にけむる庭先のぬかるみに向かって、伝六の愚痴をさけるように面をそむけました。