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うもんとりものちょう
右門捕物帖(二)
佐々木 味津三
Read 右門捕物帖(二) (うもんとりものちょう) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 221,941 characters · 435 screens
文字からしてたんざく流しというくらいですから、むろん、たんざくを流すのが遊びの眼目ですが、しかしその流すたんざくなるものが尋常普通の品ではないので、仙骨を帯びだしたご老体は風流韻事の感懐を託したみそひと文字、血のけの多いあで人たちはいわずと知れた恋歌。お時世がお時世ですから、むろんのことに歌の一つもよもうというほどの者は、いずれもみな上つ方ばかりです。したがって、座用の舟なぞも金には糸めをつけぬぜいたくな屋形船で、おあつらえどおりに涼しげなすだれを囲い、みやびたぼんぼりの灯ざしがちらちらと川風にゆらめく陰で付き添いのお腰元が蒔絵硯を介添え申し上げると、深窓玉なす佳人がぽっとほおを染めながら、紅筆とって恋歌を書きしたためる。そのたんざくを葉笹に結わいつけてあかり燈籠を添えながら水に流してやると、二、三町下った川下に前髪立ちの振りそで若衆が待ち構えていて、われ先にと拾いあげる、それから舟を上へこがして、拾った恋歌を目あてに、思いのたけをこめた返歌を流して贈る――一口にいうとただそれだけの遊びですが、これにたずさわる人々が、粒よりの風流人ばかりですので、優雅も優雅なら、情趣ふぜいの夏らしい点からいっても、なかなか評判とった催し物でした。