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うもんとりものちょう
右門捕物帖(二)
佐々木 味津三
Read 右門捕物帖(二) (うもんとりものちょう) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 221,941 characters · 435 screens
ておいた封印はいささかも異状がないのに、中身のお能面だけがいつ抜きとられたものかからなのじゃ。なれども、身におちどのあることゆえ、あからさまに奉行所へ駆けつけてまいることもならず、さりとて捨ておかばお宝の行くえもだいじと生きた心持ちもなく心痛しておったところへ、こちらのお由どのがお越しくださって、貴殿にご面識ある旨聞き及んだゆえ、家門の恥辱も顧みずに、こうしてお力借りに参ったのじゃ。なんとも不面目しだいな仕儀でござるが、老骨一期の願い――このとおりじゃ。このとおりじゃ」
いうと、老武家は真実面目なさそうに、ところどころ痛々しげな霜の読まれるこうべを深々とうなだれました。またこれは面目ないのが当然でありましたろう。かりにも高家の列につながり、有職故実諸礼作法をもって鳴る名家の主が、いかに貧ゆえの苦しみからとはいいながら、上お将軍家からのお預かり物を、しかも保管料三百金というお慈悲付きのお預かり物を、入れるべきところに事を欠いて、七ツ屋に入牢させるとは、もってのほかのふらち不行跡だったからです。けれども、われらの捕物名人むっつり右門は、つねに江戸まえの人情家でした。