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うもんとりものちょう

右門捕物帖(四)

佐々木 味津三

Read 右門捕物帖(四) (うもんとりものちょう) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 167,105 characters · 337 screens

Aozora Bunko

「じれってえね。どこへもぐりやがったろうね」

「黙ってろ」

目まぜでしかりながら、息をころして身をひそませていたその目のさきへ、ぽっかりと内陣の奥から人影が浮き上がりました。

女です。船宿の裏で見かけたあの金持ちの後家らしい大年増でした。何がうれしいのか、厚ぼったいくちびるに、にったりとした笑みを浮かべて、目が怪しく輝き、その両ほおにはほんのりとした赤みが見えました。

追うように、そのあとからもう一つぽっかりと、同じ内陣の奥から人影が浮きあがりました。

やはり女です。

同時でした。伝六がつんとそでを引いてささやきました。

「ちくしょうッ、あれだ、あいつだ。たしかに、あのお高祖頭巾の女ですぜ」

「なにッ、見まちがいじゃねえか」

「この目でたしかに見たんです。年かっこう、べっぴんぶりもそっくりですよ」

いかさま年は二十七、八、髪はおすべらかしに、緋のはかまをはいて、紫綸子の斎服に行ないすました姿は、穏やかならぬ美人なのです。

肩を並べて拝殿横の渡殿までやって来ると、魅入るような目を向けて大年増に何かささやきながら、暗い裏庭へ送りこんでおいて、合い図のように渡殿の奥をさしまねきました。