Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

めいくんただゆき

名君忠之

夢野 久作

Read 名君忠之 (めいくんただゆき) by 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 15,683 characters · 32 screens

Aozora Bunko

「……まあ……可愛らしい……まあ……」

与一は悪びれもせずに忠之の真ン前に進み寄って両手を突いた。尾藤内記と淵老人が背後からその両袖を控えた。

「お眼通りであるぞ」

「イヤイヤ。固うするな。手離いて遣れ」

「ハハッ。不敵の者の孫で御座りまするによって、万一御無礼でも致しましては……」

「イヤイヤ。要らざる遠慮じゃ。余に刃向う程の小伜なればイヨイヨ面白い。コレ小僧。与一とやら。顔を見せい。余が忠之じゃ。面を見せい」

与一は顔を上げると小さな唇をジッと噛んだ。上眼づかいに忠之を睨み上げた。

「ホホハハハ。なかなかの面魂じゃ。近頃流行の腰抜け面とは違うわい。ヨイ児じゃ、ヨイ児じゃ。近う参いれ。モソッと寄りゃれ。小粒ながら黒田武士の亀鑑じゃ。ハハハ……」

「サア、近うお寄りや」

お秀の方が取做し顔に声をかけたが、与一はジロリと横目で睨んだまま動かなかった。のみならず頬の色を見る見る白くして、眦をキリキリと釣り上げた。言い知れぬ不満を隠しているかのように……女の差出口が気に入らぬかのように……。

一座がシインとなった。しかし忠之は上機嫌らしく淵老人に問うた。

「どこか近い処に、よい知行所は無いかのう」