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てつがくのげんだいてきいぎ
哲学の現代的意義
戸坂 潤
Read 哲学の現代的意義 (てつがくのげんだいてきいぎ) by 戸坂 潤 (とさかじゅん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 22,718 characters · 45 screens
とも云う。記号と象徴との区別であるともいう、「文学者は香なき者に香を添え、形なき者は形を賦す。之に反して、科学者は形ある者の形を奪い、味あるものの味を除く」、というのである。かくて「文芸上の真」と「科学上の真」とは別だと云う。
之は単なる対比であり、単なる区別である。まだ文芸と科学との連関ではない。漱石の教養を以てしても、認識論的な眼先の至らない処、遂に之以上の設問に出ることが出来ないのは、興味のあることだ。思想の科学の角度から文芸を取り上げない時、「教養」も教養にならぬということが判る。漱石の「教養」を讃嘆しようとするロマン派流者は、まずこの点に注意を怠ってはなるまい。
だが吾々は勿論漱石を批難することは出来ない。単に彼がマルクス主義的文芸理論以前の偉材であったからばかりではない。認識論としての文芸学という観念を用意した処の文芸学は、全くごく最近の所産でしかなく、夫は文芸学の現代的段階に他ならぬからだ。それまでの文芸学はアリストテレスからボアローに至る詩論か、そうでなければ文芸史かそうでなければ文芸社会学でしかなかった。――処で最近のそして唯物論的乃至マルクス主義的文芸理論の中心課題は、世界観と方法との関係であった。