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しこくへんろにっき
四国遍路日記
種田 山頭火
Read 四国遍路日記 (しこくへんろにっき) by 種田 山頭火 (たねださんとうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 15,842 characters · 32 screens
かくれたりあらはれたり岩と波と岩とのあそび
海鳴そぞろ別れて遠い人をおもふ
ゆふべは寒い猫の子鳴いて戻つた
あら海せまる蘭竹のみだれやう
東寺
うちぬけて秋ふかい山の波音
土佐海岸
松の木松の木としぐれてくる
十一月七日 秋晴、行程四里、羽根泊(小松屋)。
早起、津寺拝登、行乞三時間、十時ごろからそろそろ西へ歩く――(銭十六銭米八合)。
途中、西寺遥拝(すみません)、不動岩の裏で、太平洋を眺めながら、すこし早いが、お弁当を食べる、容樹の葉を数枚摘む。
松原がつづく、海も空も日本晴、秋――日本の秋、道そいの畑には豌豆がだいぶ伸びている、浜おもとがよく茂っている、南国らしい、今日は数人のおへんろさんと行き逢ったが、紅白粉をつけた尼さんは珍らしかった、何だか道化役者めいていた、このあたりには薄化粧した女はめったに見あたらないのに。
喜良川の松原で、行きずりの老遍路夫婦と暫らく話した、何となしに考えさせられる事実である、三里あまり歩いて来て、羽根、その街はずれの宿――屋号が書き出してない――家に泊った、木賃宿としては新らしい造作で、待遇も悪くない、部屋も井戸端も風呂も、そして便所も広々として明るくて、うれしかった、なかなかよい宿であった。