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そうせきしとわたし
回想 子規・漱石
高浜 虚子
Read 回想 子規・漱石 (そうせきしとわたし) by 高浜 虚子 (たかはまきょし) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 115,187 characters · 231 screens
来意を通ずると直ちに私を漱石氏の室に通した。
漱石氏は一人つくねんと六畳の座敷の机の前に坐っていた。第三高等学校の校長である主人公も、折ふし此の家に逗留しつつある菅虎雄氏も皆外出中であって、自分一人家に残っているのであると漱石氏は話した。この漱石氏の京都滞在は、朝日新聞入社の事に関聯してであって、氏の腹中にはその後『朝日新聞』紙上に連載した「虞美人草」の稿案が組み立てられつつあったのであった。
「何処かへ遊びに行きましたか。」と私は尋ねた。
「狩野と菅と三人で叡山へ登った事と菅の案内で相国寺や妙心寺や天竜寺などを観に行った位のものです。」と氏は答えた。
「お寺ばかりですね。」
そういって私が笑うと氏もフフフンと笑って、
「菅の案内だもの」と答えた。
ともかく何処かで午飯を食おうという事になって、私は山端の平八茶屋に氏を誘い出した。春雨の平八茶屋は我らの外に一人の客もなくって静かさを通り越して寧ろ淋しかった。四月発行の『ホトトギス』の話になった時、氏は私の『風流懺法』を推賞して、こういう短篇を沢山書いたらよかろうと言った。私は一月前斎藤知白君と叡山に遊び、叡山を下りてから、一足さき京都に来ていた知白君と一緒に一力に舞子の舞を観て『風流懺法』