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こうふ
坑夫
Read 坑夫 (こうふ) by Natsume Sōseki (夏目 漱石) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,690 characters · 283 screens
慰めてるんだか、悪口を吐いているんだか疑わしいくらいである。坑夫から云うと、どっちも同じ事なんだろう。病人はただううんと挨拶――挨拶にもならない声を微かに出すばかりであった。そこで大勢は懸合にならない慰藉をやめて、囲炉裏の周囲だけで舌の用を弁じていた。しかし話題はまだ金さんを離れない。
「なあに、病気せえしなけりゃ、金公だって嚊を取られずに済むんだあな。元を云やあ、やっぱり自分が悪いからよ」
と一人が、金さんの病気をさも罪悪のように評するや否や、
「全くだ。自分が病気をして金を借りて、その金が返せねえから、嚊を抵当に取られちまったんだから、正直のところ文句の附けようがねえ」
と賛成したものがある。
「若干で抵当に入れたんだ」
と聞くと、向側から、
「五両だ」
と誰だか、簡潔に教えた。
「それで市の野郎が長屋へ下がって、金しゅうと入れ代った訳か。ハハハハ」
自分は囲炉裏の側に坐ってるのが苦痛であった。背中の方がぞくぞくするほど寒いのに、腋の下から汗が出る。
「金しゅうも早く癒って、嚊を受け出したら好かろう」
「また、市と入れ代りか。世話あねえ」
「それよりか、うんと稼いで、もっと価に踏める抵当でも取った方が、気が利いてらあ」