Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
こうふ
坑夫
Read 坑夫 (こうふ) by Natsume Sōseki (夏目 漱石) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,690 characters · 283 screens
人を見損なやがって」と云いたかった。しかし口だけは叮嚀に、一言、
「ええ」
と返事をして置いた。初さんはまだぐずぐずしている。驚いたと云うよりも、やっぱり馬鹿にしたぐずつき方である。
「おい大丈夫かい。冗談じゃねえ。顔色が悪いぜ」
「じゃ僕が先へ行きましょう」
と自分はむっとして歩き出した。
「いけねえ、いけねえ。先へ行っちゃいけねえ、後から尾いて来ねえ」
「そうですか」
「当前だあな。人つけ。誰が案内を置き去にして、先へ行く奴があるかい、何でい」
と初さんは、自分を払い退けないばかりにして、先へ出た。出たと思うと急に速力を増した。腰を折ったり、四つに這ったり、背中を横っ丁にしたり、頭だけ曲げたり、坑の恰好しだいでいろいろに変化する。そうして非常に急ぐ。まるで土の中で生れて、銅脈の奥で教育を受けた人間のようである。畜生中っ腹で急ぎやがるなと、こっちも負けない気で歩き出したが、そこへ行くと、いくら気ばかり張っていても駄目だ。五つ六つ角を曲って、下りたり上ったり、がたつかせているうちに、初さんは見えなくなった。と思うと、何とかして、何とか、てててててと云う歌を唄う。初さんの姿が見えないのに、初さんの声だけは、坑の四方へ反響して、籠ったように打ち返してくる。