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たしんきょう

多神教

泉 鏡花

Read 多神教 (たしんきょう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,787 characters · 36 screens

Aozora Bunko

(再び猿の面を被りつつも進み得ず、馬の腹に添い身を屈め、神前を差覗く)蘆毛よ、先へ立てよ。貴女様み気色に触る時は、矢の如く鬢櫛をお投げ遊ばし、片目をお潰し遊ばすが神罰と承る。恐れ恐れ。(手綱を放たれたる蘆毛は、頓着なく衝と進む。仕丁は、ひょこひょこと従い続く。舞台やがて正面にて、蘆毛は一気に厩の方、右手もみじの中にかくる。この一気に、尾の煽をくらえる如く、仕丁、ハタと躓き四つに這い、面を落す。慌てて懐に捻込む時、間近にお沢を見て、ハッと身を退りながら凝と再び見直す)何じゃ、人か、参詣のものか。はて、可惜二つない肝を潰した。ほう、町方の。……艶々と媚めいた婦じゃが、ええ、驚かしおった、おのれ! しかも、のうのうと居睡りくさって、何処に、馬の通るを知らぬ婦があるものか、野放図な奴めが。――いやいや、御堂、御社に、参籠、通夜のものの、うたたねするは、神の御つげのある折じゃと申す。神慮のほども畏い。……眠を驚かしてはなるまいぞ。(抜足に社前を横ぎる時、お沢。うつつに膝を直さんとする懐中より、一挺の鉄槌ハタと落つ。カタンと鳴る。仕丁。この聊の音にも驚きたる状して、足を爪立てつつ熟と見て、わなわなと身ぶるいするとともに、足疾に樹立に飛入る。