Japanese reading practice

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よるのこうず

夜の構図

織田 作之助

Read 夜の構図 (よるのこうず) by 織田 作之助 (おださくのすけ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 62,068 characters · 125 screens

Aozora Bunko

薄井も自分のマッチで煙草に火をつけた。そして暫く黙黙として、自尊心と自尊心が衝突する火花を散らしていたが、やがて薄井は口を切った。

「今日の新聞見た――?」

「いえ、まだです」

信吉は蜂谷重吉の顔を想い出した。

「批評出てるよ、君の芝居の……」

薄井は三十前後だが、芝居関係の人間には敬語を用いたことはなかった。

「見なくてよかったですな」

信吉は先手を打って置いた。

「まア、けなして置いたがね」

薄井はにやりとした。

「ひどいわ。薄井さん。いい芝居じゃないの」

信吉は冴子が自分の芝居をかばってくれたのを喜ぶ前に、薄井にそんな馴馴しい口を利いている冴子を不愉快に思った。

「しかし、あの芝居には人の心を打つものがない。真山青果の芝居は、とにかく人の心を打つからね。モラルがある」

「そうです。しかし、僕はモラルのない芝居を書こうとしているんです」

「なるほど、しかし、普遍的な人生や、偉大な思想は感じられないからね。君の芝居は……」

「普遍的な人生や、大きな思想を感ずる芝居とはどんな芝居ですか」

「外国のいい芝居はみんなそうだよ。例えば――」

薄井は二三の片仮名の名前を挙げた。