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やしゃがいけ

夜叉ヶ池

泉 鏡花

Read 夜叉ヶ池 (やしゃがいけ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 27,689 characters · 56 screens

Aozora Bunko

晃 (縁を上る)誰に遠慮がいるものか、人が笑うのは、ね、お前。

百合 はい。

晃 お互いに朝寝の時――

百合 知りませんよ。(莞爾俯向く。)

晃 煩く薮蚊が押寄せた。裏縁で燻してやろう。(納戸、背後むきに山を仰ぐ)……雲の峰を焼落した、三国ヶ岳は火のようだ。西は近江、北は加賀、幽に美濃の山々峰々、数万の松明を列ねたように旱の焔で取巻いた。夜叉ヶ池へも映るらしい。ちょうどその水の上あたり、宵の明星の色さえ赤い。……なかなか雨らしい影もないな。

百合 ……その竜が棲む、夜叉ヶ池からお池の水が続くと申します。ここの清水も気のせいやら、流が沢山痩せました。このごろは村方で大騒ぎをしています。……暑さは強し……貴方、お身体に触りはしますまいかと、――めしあがりものの不自由な片山里は心細い。私はそれが心配でなりません。

晃 流が細ったって構うものか。お前こそ、その上夏痩せをしないが可い。お百合さん、その夕顔の花に、ちょっと手を触ってみないか。

百合 はい、どういたすのでございますか。

晃 花にも葉にも露があろうね。

百合 ああ冷い。水の手にも涼しいほど、しっとり花が濡れましたよ。