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やしゃがいけ
夜叉ヶ池
泉 鏡花
Read 夜叉ヶ池 (やしゃがいけ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 27,689 characters · 56 screens
――涼しくば木の芽峠、音に聞こえた中の河内か、(廂はずれに山見る眉)峰の茶店に茶汲女が赤前垂というのが事実なら、疱瘡の神の建場でも差支えん。湯の尾峠を越そうとも思います。――落着く前は京都ですわ。
百合 お泊りは? 貴客、今晩の。
学円 ああ、うっかり泊りなぞお聞きなさらぬが可い。言尻に着いて、宿の御無心申さんとも限らんぞ。はははは、いや、串戯じゃ。御心配には及ばんが、何と、その湯の尾峠の茶汲女は、今でも赤前垂じゃろうかね。
百合 山また山の峠の中に、嘘のようにもお思いなさいましょうが、まったくだと申します。
学円 谷の姫百合も緋色に咲けば、何もそれに不思議はない。が、この通り、山ばかり、重り累る、あの、巓を思うにつけて、……夕焼雲が、めらめらと巌に焼込むようにも見える。こりゃ、赤前垂より、雪女郎で凄うても、中の河内が可いかも分らん。何にしろ、暑い事じゃね。――やっとここで呼吸をついた。
百合 里では人死もありますッて……酷い旱でございますもの。
学円 今朝から難行苦行の体で、暑さに八九里悩みましたが――可恐しい事には、水らしい水というのを、ここに来てはじめて見ました。