Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

Read 夜明け前 (よあけまえ) by 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 205,629 characters · 408 screens

Aozora Bunko

」と半蔵が言葉をはさんだ。

「だんだんこういう時世になって来た。」と吉左衛門は感じ深そうに言った。「おれの思うには、参覲交代ということも今にどうかなるだろうよ。こう御通行が頻繁にあるようになっちゃ、第一そうは諸藩の財政が許すまい。」

しかし、その結果は。六十三年の年功を積んだ庄屋吉左衛門にも、それから先のことはなんとも言えなかった。その時、吉左衛門は普請場の仕事にすこし疲れが出たというふうで、

「まあ、寿平次さん、調印もしましょうし、お話も聞きましょうに、裏の二階へ来てください。おまんにもあってやってください。」と言って誘った。

隠れたところに働く家族のさまが、この普請場の奥にひらけていた。味噌納屋の前には襷がけ手ぬぐいかぶりで、下女たちを相手に、見た目もすずしそうな新茄子を漬けるおまんがいる。そのそばには二番目の宗太を抱いてやるお民がいる。おまんが漬け物桶の板の上で、茄子の蔕を切って与えると、孫のお粂は早速それを両足の親指のところにはさんで、茄子の蔕を馬にして歩き戯れる。裏の木小屋の方からは、梅の実の色づいたのをもいで来て、それをお粂や宗太に分けてくれる佐吉もいる。