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おおとりものせんにんつぼ
大捕物仙人壺
国枝 史郎
Read 大捕物仙人壺 (おおとりものせんにんつぼ) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,606 characters · 97 screens
みんな私が悪かったんで、つい迂闊り口を走らしたんでね」
彼はこう云って口惜しがった。
その後伊丹屋では親類から、伊太郎という養子を迎え、間もなく江戸へ移り住んだが、お染のことは今日が日まで忘れたことはないのであった。
「……こういう事情があるのだもの、妾が鼬を恐がったり、女軽業を憎むのは、ちっとも無理ではないじゃないかえ」
母のお琴は辛そうに云った。
「だからさ、お前もその意で、そんな小屋者の紫錦なんて女を、近付けないようにしておくれよ。どうぞどうぞお願いですからね」
「だってお母さん不可ませんよ」伊太郎はやっぱり反対した。「私は紫錦が好きなんですもの。それにその女は見た所、悪い女じゃありませんよ」
「きっと悪い女ですよ」
「第一その時の女軽業と、今度の軽業の一座とは、別物に相違ありませんよ」
「鼬を使うとお云いじゃないか」
「それだって別の鼬ですよ」
「いいえ同じ鼬です。妾見たから知っています」
お琴は飽く迄も云うのであった。
紫錦はこれ迄は源太夫を別に嫌ってはいなかった。しかし今度の遣り口で、すっかり愛想を尽かしてしまった。
「甚助め! 飛んでもねえ奴だ!」
そこで、自然の反動として、伊太郎へ好意を持つようになった。