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おおえどおうごんきょう

大江戸黄金狂

野村 胡堂

Read 大江戸黄金狂 (おおえどおうごんきょう) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 26,754 characters · 53 screens

Aozora Bunko

「待った」

誰やら、谷底から這い上る気合、

「その勝負待った」

喘ぎ喘ぎ、剣戟の中へ割り込んだのは、瀕死の少年を肩にかけた雲水空善でした。

「お、御坊」

一歩下った山浦丈太郎、それへ噛んで含めるように、

「暫く、その勝負の相手は、これなる若いお武家でござる、まことの万田龍之助殿は、この仁でござる」

空善は月の中に、死に行く少年武士の顔を曝して見せるのです。

ドキリとした様子で、少年を避けた赤崎才市、それがうっかり、山浦丈太郎の身近だった事には気が付きません。

「騙り者奴ッ」

踏み込んだ丈太郎の一刀、赤崎才市を袈裟掛に切って落しました。

「万田殿」

空善は、心せわしく少年武士を抱え上げます。

「いざ、この首を進上しよう。本懐を遂げられい」

山浦丈太郎は一刀の血ぶるいをして、雲水の腕の中の少年武士を覗くのでした。

「もう息が無い、一念の力で、瀕死の身を辻堂近く這い上ったのを、幸い拙僧が夕闇の中に見付け此処まで担ぎ上げて進ぜたが」

「――――」

空善は龍之助の月光にカッと見開いた眼を閉してやり乍ら、感慨深く言うのです。

「道々、苦しい息の下から、素性を打ち明け、敵討つために辻堂へ――と繰り返して言われたが――南無」