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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Read 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 159,272 characters · 313 screens
といいながら、ちょっと後ろを顧みて、
「兄や、さあ、おいで、いいから安心しておあがり」
自分が手を引いて連れ込んだのは、今まで障子の蔭にいて、お勢には見えなかった一人の子供。
それを見ると、お勢さんが重ねて驚いてしまいました。
「おや、お前は茂ちゃんじゃないの?」
「ああ」
「茂ちゃん、お前という子は、ほんとにどこへ行ってたんですよ」
お勢は、まじまじと茂太郎の顔を眺めて、窘めるようにいいますと、茂太郎は恥かしそうに、また怖気づいているように、がんりきの後ろへ隠れて返事をしない。
「こういうお土産があるから、図々しくも、やって来てみる気になったのさ」
とがんりきは、早くも長火鉢の前に坐り込んでしまいました。
茂太郎は、やはりその蔭に小さく坐って、もじもじしている。
「ほんとに、茂ちゃん、お前という子もずいぶん人騒がせね。お母さんはじめ、どのくらい、心配して探したか知れやしません。いい気になってどこを歩いていたの……?」
お勢のいうことが、出戻りを叱るような慳貪になったので、がんりきが、
「まあ、そう、ガミガミいうなよ、なにもこの子が悪いというわけじゃねえや、連れて逃げたあの小坊主が、知恵をつけたんだから、何もいわず、元々通り、可愛がってやってくんな」