Japanese reading practice

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

Read 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 200,314 characters · 398 screens

Aozora Bunko

「与八、お前に少し頼みがあって、お前の力を借りに来た」

「へえ」

この若者は、竜之助を見ると竦んでしまうのが癖です。

「与八、お前は力があるな、もっとこっちへ寄れ」

耳に口をつけて何をか囁くと、与八は慄え上って返事ができない。

「いやか」

「だって若先生」

「いやか――」

竜之助から圧迫されて、

「だって若先生」

与八は歯の根が合わない。

「俺をお斬りなさる気かえ」

「いやか――」

「行きます」

「行くか」

「行きます」

「よし、ここに縄もある、手拭もある、しっかりやれ、やりそこなうな」

七

竜之助の父弾正が江戸から帰る時に、青梅近くの山林の中で子供の泣き声がするから、伴の者に拾わせて見ると丸々と肥った当歳児であった、それを抱き帰って養い育てたのがすなわち今日の与八であります。与八という名もその時につけられたのですが、物心を覚えた頃になって、村の子供に「拾いっ子、拾いっ子」と言って苛められるのを辛がって、この水車小屋へばかり遊びに来ました。その時分、水車番には老人が一人いた、与八はその老人が死んだ時はたしか十二三で、そのあとを嗣いで水車番になったのです。