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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

Read 大菩薩峠11 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 368,567 characters · 720 screens

Aozora Bunko

そこで、暫く沈黙の重くるしい空気のうちに、駒井は立ち上り、

「大切にしておいでなさい」

その立ちかかった時に、もゆる子は、涙ながら向き直って、

「殿様、わたしは、昨晩寝ないで考えさせられてしまいました」

「何を」

「いいえ、いろいろの事について、考えさせられてしまいました、そのうちでも、あのマドロスさんのことねえ」

「うむ」

「ほんとうに憎い奴、ゆるせない人ですけれど、よくよく考えてみると、かわいそうなところもありますから、許して上げていただきたいと、そのことを殿様にお願いに出ようか知らと思っておりました」

「うむ」

「あの時は、わたしも叩き殺してやりたいほどに憎らしいと思いましたけれど、考えてみれば、あれも、あの人の一時の出来心ですから、許してやっていただきとうございます」

「うむ、それは、どうでもお前の気の済むように、わしにはわしの了見がある」

こう言って、駒井は重い足どりで、この室を出て庭の方から一廻りして、自分の部屋へ戻って来ました。

あの女が許せ! という意味がよくわからない。

「わたしは、今までに七人の男を知っているのよ、なかにはわたしの好きな人もあったし、わたしをヒドい目に会わせた人もあるけれど……欲しがっているものを、くれてやるのはいい事じゃありませんか、物を施すのがいい事なら……慕いよる男という男に、情け