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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

Read 大菩薩峠11 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 368,567 characters · 720 screens

Aozora Bunko

生えた程度のものに過ぎないのですが、書いていれば、日課としてそれをしなければ、朝起きて面を洗わなかった時のように、一種の不愉快を伴うほどの習慣になっているのです。

「白骨ノ温泉ニ到着ス

病気

コノ地、秋ヨリ冬ニカケテハ、旅宿ハ戸ヲ釘ヅケニシテ里ニ去ル例ナレドモ、今年ハ珍シク冬籠リノ客多数居残リヲレリ……」

といった程度の文章で、歌もなければ、発句もない。文学的感傷めいたひらめきは一つも現われて来ないのだから、問題になりません。

「病気程無ク快癒

昨夜三階ノ一室ニ人有ルガ如ク、無キガ如キ思ヒス、尺八ノ音起リテ忽チヤム

明日、コノ処ヲ発足センカ、マタハモ暫ク逗留センカ、未ダ決心セズ」

というようなことを書いて、さて兵馬は、これから下へ行って炉辺閑談の席へ加わろうか、また入浴に行こうか、と思案したが、やがて手拭を持ってズカズカと出かけたところを見れば、閑談の席へは行かず、入浴を志したものでしょう。

兵馬が手拭を下げて出て行ったあとへ、お雪が入って来ました。

炬燵へ火を入れて上げようとして来て見ると主がいないので、失望しましたが、鉄瓶にお湯があるかないか、お茶道具が揃っているかいないかというようなことを、ちょっと調べながら、机の上を見ると、半紙四つ折りの日記帳が開けっぱなしになって、その間に筆がはさんでありますから、お雪は見る