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だいぼさつとうげ

大菩薩峠3

中里 介山

Read 大菩薩峠3 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 214,131 characters · 423 screens

Aozora Bunko

神様だってお神酒をあがるんだからな」

「そうかい、それじゃ済まねえが、一杯やらしてもらうとしよう」

小林文吾は米友の好意を得て、また徳利を引き出しました。その徳利から、さきに借りた茶碗へ冷で一杯ついで、それを一口飲んでから茶碗を畳の上へ置いて、徳利を炭火の端へ突込んで地燗をするように仕掛けました。

「俺が一人で飲んで、お前に見せておいては済まねえ、酒がいけなければ肴を御馳走しようじゃねえか。この通り、結構な肴を持って来ているんだぜ、目刺だよ、目刺を大相場で買い込んで来たんだ。目刺だからと言って、ばかにしちゃいけねえ、今時、甲州でこんなうめえ目刺が食えるわけのものじゃねえ、ほかの国ならばどんな魚でも食えるんだけれど、この甲州という山国へ来ては、たとえ、目刺にしてみたところが容易なもんじゃねえんだ、昔信玄公が北条と軍をした時分によ、小田原の方から塩を送らなかったものだ、これには信玄公も困ったね、海のねえ国で、塩の手をバッタリ留められてしまったんじゃあやりきれねえ、それを越後の謙信という大将が聞いてよ、おれが信玄と軍をするのは、弓矢の争いで塩の喧嘩じゃねえ、土や城は一寸もやれねえが、北国の塩でよければいくらでもやると言って、度胸を見せたのは名高え話だ。