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しんきだんクラブ

奇談クラブ(全)

野村 胡堂

Read 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 104,139 characters · 208 screens

Aozora Bunko

高蔵人登場

総左衛門は以っての外の不機嫌な様子で、廊下へ一歩踏み出しましたが、何を見たか、ギョッとした様子で立ち止まりました。

「お春、手燭を持って来い」

「ハイ」

自分の部屋へ飛んで行って、紙燭を持って来て見ると、廊下は斑々たる獣の足跡。

「あッ」

お春は到頭手燭を取り落して、へた張ってしまいました。

高蔵人登場

お春には固く口止めして、それとなく邸の内外を堅め、蟻の這い込む隙間も無いようにしましたが、何んの役にも立ちません。

水も垂れそうな若衆は、雨戸の隙間からでも潜り込むものか、その翌晩も、その又翌晩も、風の如く入って来て、風の如く帰ってしまいます。後に残るものと言っては、斑々たる廊下の足跡だけ。総左衛門も全く手古摺ってしまいました。

フト思い付いたのは、護持院の役僧で、加持祈祷にすぐれて居るという評判の隆順です、日頃顔見知りのことでもある、出向いて懇々と頼み込むと、

「それはさぞ御心配、多分お濠に棲んでいる獺の悪戯であろう、拙僧がちょいと退治して進ぜる。娘御には何んにも仰しゃらぬが宜しい」

恐ろしい安請合。

その晩からやって来て、夜っぴて有難いお経を上げてくれますが、怪異は風の如く入って来て、矢張り娘の桜子と一夜睦まじく語り明かして帰ります。