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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Read 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 104,139 characters · 208 screens
大鳥の如く月の庭へ
名ある高僧や修験者達の手に及ばないものが、拙者の手で安々と退治される筈も無いだろう。気の毒だが、他の優れた武辺者に頼んでもらい度い」
と言うのです。
一応尤もな言葉ですが、左様で御座いますか、では帰られません。
「爾う仰しゃらずに、どうぞ、父娘の命をお助け下さると思って、お出を願い度い」
総左衛門は涙を流さんばかりに頼み込みます。
「それでは兎に角行って見ることに致そう、成否のほどは受け合い難い」
「有難う御座います」
「ところで、相手は千里を見通す怪異の仕業では、これも余計な要心かも知れぬが、念には念を入れるのが武道の嗜み、――此処へ頼みに来られた事も、拙者が今晩出かけることも、一切他言無用に願い度いが御承知だろうな」
「それは心得ました」
「今夜、正子刻に庭先まで忍んで参る。娘御の寝所から、あまり遠くない雨戸を一枚明けて、そっと引き入れて貰い度い」
「かしこまりました。何も彼も私一人が呑み込んで御案内いたします」
「確と頼みましたぞ」
「ハイ」
総左衛門は暇を告げてそっと帰りました。
大鳥の如く月の庭へ
享保二年正月ある夜、わけても月の美しい時分でした。
高蔵人は身拵凛々しく、両刀を手挟んだ上に、六尺柄皆朱の手槍を提げて、相生総左衛門の屋敷に忍び込みました。