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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Read 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 104,139 characters · 208 screens
「綾麿様」
高蔵人の膝から抱き起こすように、男を引き寄せて、頬と頬を、娘の涙は潸々として、手負の唇を濡らします。
「桜子様、私は厩番の綾吉――」
「それも聴かぬではないが、私の為には矢張り綾麿様、お前をこんな目に遭わせて、何んという人達だろう、私も一緒に死んで上げるから、堪忍しや――」
綾吉の腰から、脇差を抜いて、あわや自分の喉笛へ突き立てようとするのを、高蔵人が危うく支えて、
「お待ちなされ娘御、死なねばならぬのは此の高蔵人であった」
其の儘ズバリと自分の腹へ突き立てます。
「あッ、何故の生害」
驚きふためいて止める総左衛門を、左の手に払い退けて、
「お蝶を捨てて武芸修業に出たという此の者の父親は拙者だ」
「エッ」
「綾吉、許してくれ、若気の至り、高名栄達にあこがれて、お前と母親を捨てた罪は免れようが無い、二十年目に酬いられて、武芸自慢の槍先で自分の子を殺したのだ」
「父上」
綾吉は必死の苦痛を堪えて、右手を桜子に任せたまま、左に父親を探り寄りました。
「綾吉、この脇差は、お前の母へやった、形見の品だ、父子が斯うしてめぐり逢うのも因縁だろう、――もう思い置く事は無い」