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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Read 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,830 characters · 24 screens
「また参りました」
「え、幾度でも」
そんな他愛もないことをいって、二人は貧しい卓を挟んで腰をおろしておりました。
「またお願いに参りましたが」
幽里子はさすがに恥かしそうですが、その恥かしさをなだめるように、
「喜んでお役に立ちましょう――この間のお手紙、反響がありましたか」
「ええ」
幽里子は艶爾として、自分の胸を抱くのです。其処に秘めてあるという意味でしょう。可愛らしい真珠色の指に透いて、乳のふくらみが、ほのかに青磁色の上着を匂わせます。
「今度はどんな事を書きましょう?」
東野南次は万年筆を執りました。
「改めて書くことは無いんですけれど――もう一度近いうちにお逢いしたいということと、私の家へお迎え出来たら、どんなに仕合せだろうということと――それから、それから――」
「それから?」
「――毎日お目にかかっていたいということと」
幽里子の唇は激情にふるえるのです。恋する処女心に、何んの用事も理由もあるものでしょう。
「宜しい、適当に書いて見ましょう。新聞でも御覧になって、暫くお待ち下さい」
東野南次はそう言って、憑かれた者のように筆を走らせました。素晴らしいインスピレーションです。