Japanese reading practice

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ちぎりきぬ

契りきぬ

山本 周五郎

Read 契りきぬ (ちぎりきぬ) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 32,757 characters · 66 screens

Aozora Bunko

おなつは『みよし』での生活で、現実的な技巧としてもそれを知った。そうして、それが誤まっていないことを、まず衣巻や津田や河野たち、ひっくるめてこの家へ来る若い客たちみんなの、自分に対する言葉やまなざしではっきりと慥かめた。

精之助はどうだろうか、彼女にはよくわからなかった。彼が自分にひきつけられていると思うときもあるし、まるっきり無関心であるようにみえるときもあった。――誰も客がなく、さし向いで精之助に酒の酌をしたことがある、夕餉のずっとあとで、珍しく寝るまえの酒だった。

「この家におちついていられそうか、べつに辛いようなことはないか」

黙って飲んでいた彼がふとこう云った。それから口がほぐれたように、ぽつりぽつりと静かに話をしたが、

「あのときの足の傷はもういいのか」

とつぜんそんなことを云いだしたり、また急に叔父というひとのことをもちだしたりした。

「三枝という家へ養子にいったひとでね、父の弟に当るんだが、近いうちに来るそうだから接待を頼むよ、――酒好きでべつにむずかしいことはないんだ、肴に註文があるけれども、それは伊代が知っているからね……叔母もいっしょに来るかもしれない、母が亡くなってからはね、この叔母と伊代が母親代りだったんだよ」